ですが、明日はクリスマス。もうこの歳になると誰かに祝ってもらうということもないので、自分への一日早いプレゼントという意味で読むことにしました。
さて私の読んだ感想ですが、素晴らしいというより素敵な短篇集でした。今やベストセラー作家の羽海野先生ですがこの短篇集が描かれたのは10年前のデビュー当時です。本当に羽海野先生のお人柄というかその優しい心のあり様や素朴で少々粗いけど愛おしいほどに心の澄んだ方なのだなということが分かりました。
表題の「スピカ」も素敵な淡い青春の物語。「冬のキリン」の切ない父と子の物語も良かったです。何より好きだったのは「はなのゆりかご」でしょうか。
ある老発明家のお話です。長年研究が認められなかった不遇な老紳士彼には若い頃に下宿で知り合った下働きをしていた妻がいます。しかし、その老研究者は自ら発明した自分の理想通りにしか見えないメガネをかけているので、本当の妻の顔を知りません。老研究者がこれまで何度か伝染病で死線を彷徨った時も片時も枕元を離れなかった妻ですが、老紳士は発明したメガネでかりそめの美しい妻しか見えていません。ですから妻に対する愛の言葉もメガネを通して見た妻への言葉でした。しかし、ある時再び老研究者は病に伏せってしまいます。そこで老研究者はここまで尽くしてくれた妻への自分の欺瞞に向き合います。そして最後に彼は自分自身のその目で妻の本当の顔を見ることになります。そこで彼が見たものは長年連れ添った想っていた通りの美しい妻だったのです。この物語はキオという少年が主人公の「ミドリの仔犬」の続編という形なのですが、この少年のお母さんがこう語りかけて終わります「お花って不思議なのよ。こうやって毎日『カワイイね』って言ってあげると、なんでかしら本当にキレイに咲いてくれるのよ」
まだまだ感想が書き足りないくらいですが、ネタバレすぎると良くないので是非読んでみてください。世に美辞麗句はたくさんありますが、これこそ珠玉の短篇集にふさわしい作品でした。クリスマスに素敵な気持ちにさせてくれた作品でした。羽海野先生ありがとう。
余談ですがWikipediaによると"スピカ(Spica)は、おとめ座α星で学名はα Virginis(略称はα Vir)。春の夜に青白く輝く1等星である"そうです。本当に春のそよ風のような作品でした。なおこの単行本の印税は東日本大震災義援金に寄付されるようです。値段も500円とワンコインで買えますよ。一人でも多くの方がこの作品で素敵な気持ちになってほしいですね。
羽海野チカ先生公式サイト
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