さて内容は交通事故で足が不自由になってしまった恵子と、腎臓に病をもち学校も休みがち由香の2人の学生とその友だちを主題にした連作短編小説です。それぞれの短編の主人公となる人物は2人はもちろん恵子の弟の優等生にクラスメイトのひねくれ者それに弱虫な八方美人まで、読者それぞれがもつ性格ともいえるし、すべての人がそれぞれの性格を持っているともいえます。
本編の大きなテーマは「友だち」って何だろう?ということです。それぞれの主人公がいじめやグループといったものやライバルという人間関係のなかで友だちを模索しています。主人公恵子は足が不自由になったことをきっかけにいじめにあいます。しかし、ひょんなことからクラスで独りぼっちの由香と出会います。恵子に言わせればおっとりでトロいけど優しい由香。きつい性格の恵子とおっとりな性格の由香は、まるで2人で1人のような、隣にいても自然で一緒にいなくても寂しくない関係となるのです。ですがクラスメイトに友だちなの?と問われれば「さあ」と答えます。
そんな中であるクラスの人気者は人物相関図まで作って、仲間はずしにあわないように道化を演じます。ある子は友だちを失うことが怖くて心身症となってしまいます。ある転校生は転校前でのいじめが忘れられずクラスメイトの色目ばかりを伺いおどおどしてしまいます。ある先輩は強がることでしか人と関係を結べません。たくさん友だちを持つことやグループに入れて安住しているみんなぼっちの子。
さて友だちとは何でしょう。前述した子供たちの性格や関係に思い当たる節はありませんか?・・・そうです。これは何も子供たちだけのことではなく、大人社会でもそのまま同じなのです。ひとつの会社また部署をクラスと置き換えてみてもいいですし、友達グループを派閥と置き換えてもいいでしょう。先輩を上司と部下に置き換えてもいいし、人気者の道化だって同じです。これは「友だち」をめぐる読者それぞれの物語といっていいと思います。
さて「友だち」って何でしょう。友だちはいますか?恵子の言う「まるで2人で1人のような、隣にいても自然で一緒にいなくても寂しくない関係」たぶん、そんな友だちをもった人は幸運だと思いますが、実際はそんなにいないんじゃないかなと思います。
しかし、結局友だちについての答えは本書にはありません。それに答えは読者それぞれの心の中にあるのだと思いますから。また恵子も由香ちゃんを失うことになります。それは予期していたことであり、永遠の別れともなるのです。
由香の言葉が心に残ります。
「中学に入っても一緒にいていい?」
続けて
「わたし、途中でいなくなっちゃうかもしれないけど、一緒にいてくれる?」
これは楽しい思い出の記憶が多くなればなるほど、やがて来る別れが恵子にとってつらくなるという意味での由香の言葉です。
それぞれの登場人物たちのつらさや悲しさそして苦しみが切なくなります。何故か夏目漱石の「こころ」を思い出しました。これも親友を失ったことを主題にした物語です。恵子は友だちについてこんなふうなことを言っています。松葉杖の私と鈍くて足の遅い由香と、歩く(進む)速度が同じだった、ゆっくりゆっくり、マイペースに一緒に歩けたことだと。この物語には由香を失った恵子のその後も書かれています。さてその後の恵子はどうなってしまうのでしょう。
そして「友だち」とは何でしょう。
あなたも「友だち」について考えてみませんか?
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