これはキャパの40年の生涯において撮った写真の代表的なものを集めた写真集です。鬼気迫る戦闘シーンや、または戦火の子供たちを写したものもあります。またキャパの友人らヘミングウェイやピカソ、恋人のイングリット・バーグマンを撮影したものもあります。
しかし、キャパの写真で最も迫力に溢れるのは戦場写真でしょう。しかし、キャパは自身、戦場でしか存在意義が見出せないために悩んでいたといいます。キャパはこう言っています。
「スペイン内戦を通じて、私は戦争写真家となった。その後、私は“はったり気味”の戦争写真を撮り、ついに本当の大激戦の数々の写真を撮ることになった。そして、このような戦争のすべてが終わったとき、失業した戦争写真家となって、非常に幸いだと思った。私は自分の人生の終わりの日まで、戦争写真家としては失業のままでいたいと願った。」
また解説の沢木耕太郎氏はキャパの証言を通してこう書いています。
「(キャパは言った)『俺はバカだ、どうしてインドシナにゆくなどといったんだろう』と。これは恐らく死を予感しての言葉ではなく、戦場に行くことは憂鬱だが、行ってしまえばそこで生き生きとしてしまうだろう自分をよく知っている、五つの戦場を渡り歩いてきた戦争写真家の、深い絶望の籠もった吐息のような呟きだったと思うのだ」
キャパはそんな言葉を残してインドシナで地雷を踏み亡くなりました。キャパはその生涯において戦場にしか生きる場を見出せなかったといいます。しかし、戦場で兵士を囲んで歩く子供たち、そして昭和初期の日本の下町の人々、子供を抱えたピカソの笑顔、最愛のイングリット・バーグマン。戦場の写真の合間に収められた数少ないこれらの写真の中にキャパが求めていた安らぎのようなものも感じます。最後にキャパの名刺には冗談でこう書かれていました。
ロバート・キャパ
戦争写真家
失業中
そしてその状態を喜んでいるとも。
フォトグラフス―ロバート・キャパ写真集
沢木 耕太郎





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