2011年02月01日

【マンガ短編集】虫と歌@市川春子

装丁から絵柄セリフ一つひとつに至るまでまたまた珠玉の短編を読みました。本書は手塚治虫文化賞「新生賞」を受賞した作品で、別冊アフタヌーンに掲載された短編をまとめたものです。本書の帯にあるように“深くて軽やか”そのまま、どこか一昔前の少女マンガタッチの軽い絵柄なのに、そこに描かれている内容はとても深く清らかです。

ここで帯に書かれている本書のすべての作品の紹介文を書いてみましょう。

『星の恋人』僕の妹は、僕の指から産まれた。妹への感情は兄弟愛のそれを超え、「ひとつになりたい」と願うようになった―。

『ヴァイオライト』飛行機墜落事故で奇跡的に生存した大輪未来と天野すみれ。互いに助け合う二人に、意外な形で別れの時は来る。

『日下兄弟』肩の故障で野球部を離れた雪輝。日々“成長”を続けるヒナとの出会いによって、彼が見つけたものは―。

『虫と歌』3人の兄妹が暮らす家に夜の闖入者、それは虫であり弟であった。共同生活を始めた彼と兄弟たちの距離は少しずつ縮まり、そして―。


私が好きなのは「星の恋人」と「日下兄弟」です。というより星の恋人のつつじと日下兄弟のヒナというキャラクターをとても気に入りました。

好きなセリフというと、星の恋人で主人公さつきがつつじや叔父と海に出かけた場面「君とまた一緒になりたいから 兄の役はできないよ」そうさつきがつつじに言うと、つつじはこう叔父に言います。「私 朝はパパの母親で 昼は娘で 夜は恋人で 毎日心配で幸福で忙しくて 彼の体が懐かしいなんて感じるヒマないの」このセリフを読んだ瞬間色んな意味が内包された言葉のようで、とても切なくまたそれだけにつつじがよりいっそう愛おしくなってくるのです。登場人物それぞれが失ったものに対する喪失感は結局埋まらないということが描かれそれが読者を切なくするのかなと思うのですが、それでもラストにほんのわずか未来への希望が描かれているのは救いでした。

日下兄弟のほうは、この作品を読んだ人たちの中では人気が高い作品ですね。ヒナもまた人ではないけれど意思を持つ妹的なキャラクターとして描かれていますが、そのヒナと主人公雪輝の兄弟愛や成長を描いたものです。主人公雪輝もまた星の恋人に登場するさつきと同じように両親がいないキャラクターですが、そんな雪輝の独白「次は間違えない 全部捨てて ひとりきりではじめから」というセリフも心に訴えますが、私はそのセリフに続く言葉「でも 妹を捨てることはできない ひとのくずと ほしのちりの兄弟だ」という言葉です。

本書の短編全てに共通しているのはある種の喪失感や孤独また悲しみそしてわずかな希望でしょうか。それぞれの短編がどこかしらそれぞれの読者のそれらに触れるということもあると思います。それだけに冒頭に書いた軽いながらも深くもなるのだと思います。本書を読んで作者の市川春子さんのこれからの作品が楽しみにもなりました。

朝日新聞書評漫画偏愛主義:虫と歌(市川春子)

市川春子さんのサイト(ホームページ)

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)
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市川 春子

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