2010年01月27日

考えるヒント@小林秀雄

今更ながら小林秀雄に“挑戦”してみました。もう小林秀雄のことを紹介する必要はありませんね。小林秀雄については江藤淳をはじめ様々な解説や研究もされているし、ネット上に様々な感想や分析がなされています。

今まで小林秀雄は読みたいとは思っていても、なかなか挑戦できずにいました。小林秀雄の本を読むことがなぜ挑戦なのか、小林秀雄さんの批評は現在でも類を見ないものだといわれています。それに対して私が何の感想が書けようかという、一種小林という一大思想家に圧倒されていることもあります。また批評を批評するということが、なんだかおこがましい感じもします。

それに本書を読んで感じたのが、この本に限らず小林秀雄を読みこなすなら、相当のものが求められるような気がしたのです。例えば、小林の著作はもとより小林研究の本など、さらには小林が批評対象とする事柄に対する知識も必要だと思います。

本書でもそうですが、小林は本居宣長から政治や哲学・思想まで、今更ながら膨大な知識があります。他の方の感想などをチラッと読んでみましたが、小林の書いた一文だけすら何かしらの分析の対象となっています。つまりはその教養の土台が読むほうになければ、小林が本当は何が言いたかったのか分からないのではないかと思ってしまいます。

恐らくは小林の本は、読み流す部類の本ではないと思います。私自身、教養というものなどとても浅はかなものですから、たぶん他の有名無名の方々の小林評のようなことは書けませんが、前述の読み流す部類の本だけでなく、本書は一種の哲学書のように、時間をおいて何度も読むことが大切だと思います。

私は今回初めて小林の著書を読みました、そこで拙いながら感想を書くと、プラトンの国家論も読みたくなったし、本居宣長についても興味をもちました。ドストエフスキーについては、積読の山から引っ張りだして読みたくなりました。なぜ僕がこんなことを思ったのかというと、小林自身が書いていました。

ある対象を批評するとは、それを正しく評価する事であり、そのためには、対象の他のものとは違う性質を、積極的に肯定する事であり、そのためには、対象の他のものとは違う特質を明瞭化しなければならず、また、そのためには、分析あるいは限定という手段は必至のものだ。


まさにその通り私は、小林が書く文物に対していちいち興味がわきました。この本だけから感じたのは、小林の文章にはある種の情緒というか、季節や風物また詩や小説などの芸術に対しても、そのまなざしは鋭いもののどこか哀愁を感じました。本書は言わずもがなな、一級品だと思います。私もまたいつか歳をとり再び本書を開くことがあったら、どんな感想を持つでしょう。その時は、もう少し小林が真に言わんとすることが分かることができればいいなと思います。

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posted by hermit at 12:26 | Comment(0) | エッセイ(本)

2010年01月12日

喜びは悲しみのあとに@上原隆

脳に障害のある子を持つハードボイルド作家、倒産した地方新聞社の元社員、「子殺し」裁判ばかり傍聴し続ける女、十年間第一線で活躍しながら突然「戦力外」通告されるプロ野球選手。そんな18人の肖像が収められたノンフィクションです。著者はこうした人たちを取材するにあたってこんなことを書いています。

「つらいことや悲しいことがあり、
自分を道端にころがっている小石のように感じるとき、
人は自分をどのように支えるのか?」


前編ともいえる「友がみな我よりえらく見える日は(当ブログ)」では、この社会の影ともいえる人たちの救われない日々が取り上げられていましたが、本書は著者の言葉の通り、最後に一筋の希望が感じられる内容になっています。またより人の内面に迫った一編もあり、なかには性的にかなりドラスティックな内容もあります。

ですが、前作と同じでどこか影や心の溝や傷を抱えた人たちには変わりありません。職を失った地方新聞記者たちは、書くことを生業にしたいと思いつつ、就職難という現実に向かわざるを得ません。子殺し裁判を傍聴し続ける女性は、かつて自らも親から虐待を受け、また自身も虐待する親でした。

本書の中の「タイムマシーンに乗って」というタイトルでは、中学時代のクラスで、顔のことや仕草のことなど、それこそ悲惨といっていいほどのいじめを受けていた女性が取り上げられています。彼女はひどいいじめのさなか一篇の詩を書いています。

何か一度きりのことなら何も怖がることはない。
それがそれっきりで終わってしまうのなら。
けれども持続するものなら怖い。
自分が関係しながら続くことなら、とても怖い。
その怖さを打ち破るにはどうしたらいいだろう。
きっとそれはとてもつらいものになるだろう。
私は眠れない不安を捨てるために恥をかくだろう。
不安は私をこわす。
恐れることは私をつぶしていく。
救いの手はどこにもないと知りながら
胃をこわばらせながら祈るだろう。
誰か助けて!


女の子は中学3年生でした。そしてそれから9年後、23歳になったその女性を取材しています。彼女はその後高校生になり、幸いいじめとは無縁の楽しい日々を過ごしました。友達もたくさんできたし、恋愛もしました。かつていじめをうけていた少女は、現在、彼女を美しいといい、結婚しようといってくれる恋人もいます。「時間だけが味方だ」そう当時の彼女は話していました。そして現在の彼女はこういいます。

「ああ、タイムマシーンに乗って、あの頃の自分に教えに行きたい。大丈夫だよって」

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posted by hermit at 17:45 | Comment(0) | エッセイ(本)

2009年01月06日

お笑い男の星座&浅草キッド著のおススメ本

笑った!とにかく面白かった!変装免許証事件のくだりではオナカかかえて笑いました。詳しくは書けませんが、文章でも笑えますが写真を見るとさらに爆笑してしまいます。この本では浅草キッドが芸能界の色々な事を面白おかしく書かれています。

笑いだけではありません。江頭グランブルーのくだりでは、スタッフ、タレント達のバラエティ番組に対する熱意が熱く語られており、江頭2:50の水中での息止めのあたりでは、目頭が熱くなってしまいました。大宅壮一ノンフィクション賞候補作にもなってます。

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そしてこれぞ「たけしイズム」の原点

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城南電気の宮路社長、和田アキ子VSYOSHIKI、前田日明、たけしと洋七、爆笑問題…。さそり座の男こと美川憲一と水道橋博士の一場面に爆笑し。更に「岸部のアルバム」という題名で語られる岸部シローの面白さ、ターザン山本とジャイアント馬場の秘話。これぞ作家浅草キッドの原点です。

そして浅草キッドを作家として世に知らしめた2冊。

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B級タレント本をこれでもかというほどの褒め殺し。
褒めているのに笑えてしまう、さすが浅草キッドともいえる1冊。

博士の異常な健康
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水道橋博士

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次は博士の名の通り専門家顔負けの実用健康知識&エンターテイメント
要素たっぷりの本。浅草キッドそして水道橋博士を一躍有名にした本。
実際本書の方法で博士は増毛に成功したという話題の1冊。

ただただ笑いたい方。

水道橋博士の異常な愛情―または私は如何にして心配するのを止めて風俗とAVを愛するようになったか。
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水道橋博士の性の奴隷否、性は徒労におわる毎日を隠すものなくノーカット、モザイクなしで届けた快心のエッセイ。女に対しての冒険と探求、実践と反省。とにかく疲れている方におススメ。ただただ笑いたい方楽しくなりたい方におススメ。お腹の底から笑っているのに勇気がでるかもしれない1冊。プレミアがついているので古本屋で見かけたら即ゲットしてみてください。

全冊読ませる内容なのは保障します^^
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posted by hermit at 13:03 | Comment(0) | エッセイ(本)

本は鞄をとびだして

どんなに難解な文学作品でも著者の言い方をすれば、
半径500メートル以内の身近な自身の出来事や
物事を通した著者の考え方と同じく肩の力のぬけた文章は、

たぶん現在の若者なら絶対に読まないであろう、
お堅い文学作品でも何々そんなに面白いのか……って
思わず本の題名をアマゾンで検索したくなるような文章になっています。
とあるサイトでエッセイの教本として紹介されていましたので読みました。

本は鞄をとびだして (新潮文庫)
群 ようこ

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posted by hermit at 12:38 | Comment(0) | エッセイ(本)

2009年01月03日

斎藤美奈子「それってどうなの主義」

著者がここ10年ほどあちこちの新聞や雑誌に書いたものをまとめた内容です。タイトルのそれってどうなの主義とは、本書から引用してみると次の通りです。

一、「それってどうなの」は違和感の表明である。
一、「それってどうなの」は頭を冷やす氷嚢である。
一、「それってどうなの」は暴走を止めるブレーキである。
一、「それってどうなの」は引き返す勇気である。

「それってどうなの主義」とは、何か変だなあと思ったときに、とりあえず「そ
れってどうなの」とつぶやいてみる。ただそれだけの主義です。つぶやいたとこ
ろで、急に状況が変わるわけでも事態が改善されるわけでもありません。それで
もこれには、ささやかな効用が、あります。

その「宣言文」は冒頭の四つに要約されます。すなわち、違和感を違和感のまま呑み込まず、外に向かって内向きに表明することが肝心。しかもその基本スタイルは小さな声で、ぼそぼそとつぶやくのが肝心なのだそうです。

ですから、大まかなテーマはあっても、政治から生まれ故郷の話まで、話題は様々にひろがっています。執筆されたのが、小泉政権当時のものですから、読むと懐かしく、今読んでも著者の鋭さが窺えます。

著者の立ち位置を僕の私見で書いてみると、リベラルに近い左側にありつつ、フェミニズムの観点からも発言されているようです。まあ、某レビューでは、「モダンガール的」だとか「お嬢」だとか、要はどんなに厳しい評論でも、「品性と愛嬌」は失わないといったところでしょうか。

僕的に興味深かったのは、著者のふるさとである新潟についての話題でした。ひとつ下の有名漫画家さんの話や、新潟を題材にした文学談義、もちろん新潟の思い出まで、著者のルーツというか、育んだ地域性というものが分かって良かったです。

文芸評論家というイメージが強い著者、本書を読むと、数々のベストセラーを斬って捨てる辛口評論も、日々の考察の賜物だということが分かりました。

それってどうなの主義
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斎藤 美奈子

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posted by hermit at 15:43 | Comment(0) | エッセイ(本)

池田晶子「知ることより考えること」

週間新潮に2005年7月から2006年7月の1年間の連載をまとめたものです。内容は著者の書いた一連の週刊誌エッセイと変わらないのだけれど、やっぱり哲学者としての考え方、事象よりもその本質を問うような姿勢はくずしません。

著者は一貫して昨今の世間の風潮、ITバブルのように、お金のために、お金を儲ける。つまり、生きるためにお金を稼ぐのではなく、もはや金のために金儲けをするという本末転倒になっている現代社会に対して、彼女らしい苦言を呈します。

例えば、小学生から株式投資を学ばせるというニュースに対してただ一言「死にたくなった」と彼女ならではの言葉を漏らします。常々いずれは文部大臣となり、日本を哲人国家にすると公言していた彼女。

少年少女たちに対して考えることを実践しながら教えてきた彼女とすれば、このようなニュースは相当ショックだったようで、こんなことを書いています。

「お金持ちになりたいといって、お金持ちになって、それが何だというのだ。人生の何がどうなるというのだ。どういうわけだか生きて死ぬという人生のこの謎は微塵も動いていないじゃないか」

欲にまみれた世情を憂い、哲学の裾野から、知ることより考えることとその言説は一貫されています。

知ることより考えること
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池田 晶子

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posted by hermit at 15:02 | Comment(0) | エッセイ(本)

池田晶子「41歳からの哲学」

41歳と題されているのですが、「14歳からの哲学」の大人版と思わないほうがいいかもしれません。本書は週刊新潮に連載されていた哲学エッセイをまとめたものです。

2003年5月から2004年6月まで、日々世間をにぎわす時事問題に対して著者が哲学からアプローチしています。死をテーマにしたものが多く「なぜ人は死を恐れるか」「死は現実にはあり得ない」「死ぬ時は1人である」といったことについて書かれています。

「なるほど戦争では大勢の人が死ぬけれども、平和な時でも人は死ぬ」

「便利になるほど、時間は早い。忙しくなるほど、時間はなくなる。忙しい忙しいと生きていたら、なんと死ぬ時がそこに来ていた。いったい人は、何のために何をしているのやら」

「子供に善悪を教えるにはどうすればいいか。『なんで悪いの』という子供の問いに、大人はどう答えるか」

このように著者は一貫してどんな話題でも、哲学的側面から語ります。拝金主義の名のもとに、勝ち組負け組みと騒ぐ大衆や、己の自己満足のために他人の生き死にを軽んじる者たち、それらとは一線を引き、世間一般における常識とは、規則や法律とはなんなのか?生き方死に方というものをどう考えるか、得てして加熱するニュースに対して、著者の明晰な哲学的視線から解説されています。

著者にも簡単には答えの出せない問題としながらも、著者のテーマである考えること、知らないということを知ること、無知の知ということを、わかりやすく解説された著書です。哲学からは離れませんが、エッセイ色の強い作品かもしれません。

41歳からの哲学
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posted by hermit at 14:57 | Comment(0) | エッセイ(本)
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