2010年04月02日

【禁断の書?】読んでいない本について堂々と語る方法@ピエール・バイヤール

本文より
「私の経験によれば、読んだことのない本について面白い会話を交わすことはまったく可能である。会話の相手もそれを読んでいなくてもかまわない。むしろそのほうがいいくらいだ。もっというと、ある本について的確に語ろうとするなら、時によっては、それを全部は読んでいないほうがいい。いや、その本を開いたことすらなくていい。むしろ読んでいては困ることも多いのである。ある本について語ろうとする者にとっては、とくにその内容を説明しようとする者にとっては、その本を読んでいることがかえって弊害を招くこともあるのだ。このことを私は本書で何度も力説するはずである。」


と、ここまで断言されると、「こりゃあ、かなわんわー」と脳内に大阪弁がこだましてきそうですが、本書の著者はパリ第八大学文学部教授であり、精神分析家で、至って真面目な内容なのです。

内容としては、第一部で「読んでいない」にはどんな段階があるのかを、また第二部で未読書について語るための「実用的」アドバイス、第三部では四章からなり、各章には一人の作家の作品からとったエピソードを配するという整然とした構成からなっています。

まあ内容はそうなのですが、タイトルだけ読めばただのノウハウハウツー本の類と勘違いされそうですが、意外に本を読まずに語ることを下敷きにした、優れた反教養主義とも反知性主義を説いているともとれるし、優れた批評論や文化論や読書論としても読めます。

著者自身が書くように、いくら大学教授だって読まないものは読まない(読む時間が足りない)ので、一応これは必読と呼ばれる書物、いわゆるプルーストの作品だとか「オデッセイア」とか「ユリシーズ」の類など、まあ知ったかぶりとうか他所から仕入れた知識とか噂を駆使して語ってしまうわけです。著者がいうには、まあそういう場合、相手も読んだことがない場合が多く、読んでいたとしても細部にいたるまで記憶しているわけではないので、何も問題はないとか。

しかし、著者の場合職業柄、同僚の教授が執筆した本の感想を求められることがあり、そんな場合はいわゆる「感想(議論)のすり替え」を行うのです。つまりは本の内容やテーマ(あるいはその本のタイトル)が提起する事柄の一般的あるいは普遍的な問題を持ち出し、そこから文明批評やら社会時評にすりかえてしまうとか。

著者は全ての本を知るために、タイトルと書棚の番号の把握以外全く本を読まないという、ある架空の〈共有図書館〉司書の寓話を持ち出し、こう書きます。

「一冊の書物は、私が〈共有図書館〉と呼んだ大きな全体の中の一要素にすぎないので、評価するのにそれをくま なく読んでいる必要はない。大事なのはそれが〈共有図書館〉のなかで占める位置を知ることである。その位置は、ひとつの単語がある言語において占める位置に似ている。一個の単語は、同じ言語に属する他の単語との関係において、また同じ文中にある他の単語との関係において位置づけられてはじめて意味を持つ。問題なのは決してしかじかの書物ではなく、ひとつの文化に共通する諸々の書物の全体であって、そこでは個々の書物は欠けていてもかまわない。つまり〈共有図書館〉のしかじかの要素を読んでいないと認めていけない理由はどこにもないのである。」


つまり、その書物の著者名やジャンルを知り他の著者との関連性またそのジャンルのどの部分を占めるのかを類推することによって、それをあまたの書物のうちに「位置づける」ことができるということです。著者は読んでいない本を堂々と語ることこそ、その書物を読まないことによってこそできる副次的な創造なのだとまで語っています。

著者は教授という職業柄もあって、読書量がそのまま出世や評判を左右する学術界というものや、ことさら読書を奨励する教養主義的エリート意識のようなものに、本書を通してアンチテーゼを投げかけているように、本書は発売からフランスだけでなく欧米で瞬く間のうちにベストセラーの地位を獲得し、現在15カ国で翻訳が進められているのだとか。

まさしく、著者と同じく世の中の教養主義といいますか、毎年数千数万という数の書物が出版されるなか、当然として一人で全ての本に目を通すには限界があります。絶対的な数からいえば、一生のうちで読めない本のほうが多いのは当然で、そうすると読んでいない本について語らなければならない機会も多くなります。

最後に「読んでいない本について堂々と語る方法」という本を読み、かつそれについてこうして読書ブログに書いて(語って)いる私(ブログ主)というものを、今一度考えてみると空目したくなる気分ですが、一つ思ったことは、実はこの著者、どこの誰よりも本を読んでいるのではないか、むしろ読むうちにこれだけの方法を論じきれるということは、ある意味それだけ読書の幅もジャンルの幅も専門知識はもちろん相当な読書量を必要とはしないかなどと思ってしまいます。そうなるとちょっと……これはしたり、この著者、なかなかやりおるのう、なんて思ってしまいました。

読んでいない本について堂々と語る方法
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posted by hermit at 05:49 | Comment(0) | ブックガイド(本の本)

2010年02月19日

【100冊×10人】現代プレミア・ノンフィクションと教養@佐藤優責任編集

ノンフィクション冬の時代といわれている昨今、「現代」「論座」「諸君!」「月間playboy」が相次いで廃刊しました。これらの雑誌は、大衆のオピニオン的意味合いの他に、ノンフィクション作家にとって大切な発表の場でもありました。一冊のノンフィクションを作り上げるのに、5年や10年かかってもおかしくないともいわれるこの世界では、これらの雑誌に発表の場があるということは取材活動を維持するに等しいことでした。

本誌では佐藤優氏を中心に佐野眞一氏や野村進氏また魚住昭氏や高山文彦氏など、ノンフィクションライターとして第一線で活躍している蒼々たる面々10人により、次世代に残したいノンフィクションを各100冊ずつ紹介するというのが前半の内容です。年代も方向性も違うそれぞれの選者が、独自の嗜好で選んだ100冊なので、好きな作家の血肉となった本をチョイスして読むのもいいかもしれません。

佐藤優氏の場合、政治やロシア関連また歴史の裏面史的な内容が多く、「野中広務 差別と権力 」「甘粕正彦 乱心の曠野」などが選ばれています。その「甘粕正彦 乱心の曠野」の作者である佐野眞一氏はご自身の取材対象であった宮本常一の「忘れられた日本人 」「戦艦大和ノ最期」など100冊が選ばれています。少し変わったところでは、スポーツライターの二宮清純氏の選書はやはり半分ほどがスポーツノンフィクションで、アメリカ版「野村ノート」と氏が紹介する「マネー・ボール」「敗れざる者たち」また「オフサイドはなぜ反則か」他100冊をあげています。一方重松清氏は、ご自身もノンフィクションを書かれますが、今回は小説家というポジションから、小説家が執筆したノンフィクションを紹介しています。例えば、松本清張「日本の黒い霧」そして有吉佐和子「複合汚染」 他100冊があげられています。

そんな100冊×10人で選んだ総合ベスト10は以下
(説明は本誌から)

日本共産党の研究 (立花隆)
日本共産党の研究(一) (講談社文庫)
1922年の党成立から戦時中の崩壊までを
膨大な記録から活写した日本共産党通史
コミンテルン支配からリンチ事件まで
関係者の証言で構成。

戦艦大和ノ最期 (吉田満)
戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)
世界最大の不沈艦といわれた戦艦大和の
撃沈のさまを敗戦直後に克明に綴った手記

レイテ戦記(大岡昇平)
レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)
太平洋戦争の“天王山”レイテ島に展開された
日米両軍の死闘。膨大な資料を駆使して、
詳細かつ巨視的に、戦闘の姿を記録する。

昭和史発掘〈1〉 (松本清張)
昭和史発掘〈1〉 (文春文庫)
政界に絡む事件の捜査中に起きた「石田検事の怪死」、
部落問題を真正面から取り上げた「北原二等卒の直訴」など
昭和初期の埋もれた事実に光をあてる。

誘拐 (本田靖春)
誘拐 (ちくま文庫)
1963年に起きた幼児誘拐事件「吉展ちゃん事件」
犯人を凶行に走らせたものは何か。
貧困と高度成長が交錯する都会の片隅に
生きる人間の姿を描く。

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (D・ハルバースタム)
ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (Nigensha Simultaneous World Issues)
ケネディ大統領が政権に招集した
「最良にしてもっとも聡明な人々」。
彼らエリートたちはなぜ米国をベトナム戦争の
泥沼に引きずり込んだのか。
賢者たちの愚行を綿密な取材で追跡する
現代の叙事詩。

テロルの決算 (沢木耕太郎)
テロルの決算 (文春文庫)
1960年社会党の浅沼稲次郎委員長は
17歳の右翼の青年山口二矢に刺殺された。
政治の季節に邂逅した二人が激しく交錯する
一瞬までを臨場感あふれるシーンを積み重ねて
物語へと結晶させた。
(当ブログの感想)

苦海浄土―わが水俣病 (石牟礼道子)
苦海浄土―わが水俣病 (講談社文庫)
チッソの工場排水の水銀が引き起こした
文明の病・水俣病。この地に育った著者が
聞き書きの形をとって著者とその家族の魂を物語る。

サンダカン八番娼館 (山崎朋子)
サンダカン八番娼館 (文春文庫)
戦前の日本では、10歳に満たない少女たちが
海外に身を売られ南方の娼館で働かされていた。
天草のおサキさんから聞き取った話には、
「からゆきさん」の過酷な生活と無残な境涯が
映し出されていた。

自動車絶望工場 (鎌田慧)
自動車絶望工場 (講談社文庫)
高度経済成長期の自動車工場。
花形産業の象徴であるはずの
工場では労働者が日々絶望的に続く
ベルトコンベア作業に追われていた。
自ら働いた経験を再現したルポルタージュ。

本誌の冒頭と中盤にはベテランと若手ライターそれぞれの対談が収録されていますが、佐野眞一氏はじめとするベテラン対談と対比して、いとうせいこう×重松清×武田徹の三氏の対談では、出版不況や発表の場の減少を嘆くより、ネットやアマチュア作家の発掘を若手自らが率先して行っていかなければならないとする内容は、示唆に富んだ内容でした。

さらに30人の著名人による「体験的ノンフィクション論」というコラムでは、雨宮処凛氏から児玉清氏などによるノンフィクションについてのエッセイが載せられています。興味深いのは一水会顧問の鈴木邦夫氏が書く「テロルの決算」についての内容でした。山口二矢と氏が同年齢という感慨もありつつ、むしろ山口が、浅沼稲次郎自身心情的には天皇への敬愛は捨ててはいなかったという事実を知らずに実行してしまった現実に衝撃を覚えたとしてます。鈴木氏は沢木耕太郎の「テロルの決算」自体が右翼や左翼双方のテロリズムの有効性をなくしてしまうテロルだと評価しています。

後半は高山文彦氏のライター修行時代の回想と佐藤優氏の対談が2つあります。高山氏が大下英治氏のもとで寝る間さえなく高熱を発しても原稿を書き続けていた時代に得心した「才能とは体力だ」という言葉は、内容を読むほどに納得してしまいます。佐藤氏の対談のひとつは、高橋洋一氏とのもの、もうひとつは副島隆彦氏との対談で外務省や官僚主義に対する元当事者たち告白といった内容です。

もうひとつ興味深いのは、「ジャーナリズムは機能しているか」とのタイトルで、辰濃哲郎氏の「かくして朝日新聞の牙は抜かれた」と題する記事。これはかつて朝日新聞社会部デスクだった筆者が、朝日の変説の様を書いた内容で、右傾化する時流の中で、朝日上層部と、社会部デスクであった著者など現場との対立、上層部による組織替えによっておこった人員の減少と弱体化、やがてはPKOなどの自衛隊海外派遣の容認、そしてついには集団的自衛権の容認に至るまで、極左ともいわれた朝日新聞が時流に流され、変説するに至りその身をますます弱体化させていく様が描かれています。

このようなコラムが大小様々に掲載されており、オピニオン誌一冊分ぐらいの厚さの内容となっています。本誌の執筆陣であるノンフィクション作家自身が口々に現状の問題点をあげている点は以下の3つです。

1. 取材が長期に及ぶため、取材費及び生活の保障がない。さらに、ノンフィクション賞の賞金でもそれは変わらない。そういった意味で、前述した雑誌の廃刊は作家たちにとって大きな痛手であった。
2. ノンフィクションのカテゴリーが曖昧である。ノンフィクションとはすなわち小説(フィクション)以外のもの全般であるという曖昧さがあるため、細かなカテゴリー分けが、著者にとっても読者にとっても必要。以前、沢木耕太郎や開高健などによるニュージャーナリズムというジャンルがあったが、そういった新たなジャンルが生まれてこない。
3. 小説のように、良い批評家がノンフィクションのジャンルにはいない。良い文学作品には良い批評家が必要なように、良いノンフィクションを育てるためには良い批評家が必要だ。これには2のカテゴリー付けにも影響する。

現在はノンフィクション以前に出版そのものが不況といわれています。ノンフィクションとは何なのか、それは事実に事実を積み重ねたドキュメントです。しかし、ノンフィクション作家自身がその事実の積み重ねに対する自分の主観に惑わされることがあるといいます。しかし、昨今の社会には事実は小説より奇なりを地でいくようなことが多々起こっています。だからこそ今、求められるのは小説を越えたノンフィクションなのであり、今こそノンフィクションが必要な時代なのだと、そう本誌は読者に訴えかけています。

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posted by hermit at 17:45 | Comment(4) | ブックガイド(本の本)

2010年02月05日

【ブックガイド】大学新入生に薦める101冊の本(新版)@広島大学編

これを読む広島大学の学生さんは何と恵まれているのだろうと一読して思いました。いままで本を紹介したブックガイドはいくつか読みましたが、本書は一級品です。私も、これを読む学生さんと同様の年代にここに紹介されるような本を読めたなら、もっと今の私は変わっていたかもしれないなとそう思います。

よくお金を遣うなら「生き金」を使えといいますが、本書はまさに「生きていくための読書」となりえる内容だと思います。教養という言葉はよく簡単に使われますが、本書で紹介される本は生きていくための手がかり、あるいは人生の下地となりうる選書だと思います。

第1章「教養への誘い」では哲学から科学まで、その入門的な本が紹介され、まさにこれから学問同様生きていくための様々な基本を紹介しています。

第2章「人間の記録」は、自伝や伝記を通して生きるということ、そして先人たちがいかにして困難に立ち向かい、あるいは失敗し、そしてどう生きたか。経済学者から独立運動の指導者、そして体に障がいをもって生きている人まで、人間の生きた記録です。

第3章「パラダイムを超えて」、パラダイムとは学問において定説とされているものです。ここでは科学や物理などの世界の本を紹介しています。その学問の世界で決して解けない難題とされた問題を、苦心の末に答えを出した科学者や、その答えとなったパラダイムを覆した科学者、学問はパラダイムを覆すパラダイムシフトによって発展する。ここでは科学の学問的な内容ではなく、その学者の思考や生き方を通して学問のありかたについて選書しています。

第4章「戦争と平和への希望」本書はもちろんどれも必読の本ばかりなのですが、私が読んだ中で最も感銘を受けたのは「人間の記録」と共に本章でした。本書の編纂は広島大学です。広島はいうまでもなく被爆地であり平和都市でもあります。本章では戦争の記録や敗戦について、そして平和への取り組みについて書かれた本を紹介しています。ときにこのようなテーマで選書をする場合、思想信条によって偏りがあったりしますが、本書では歴史認識の右や左などの偏りなく、具体的な戦争の記録、そして国際的な平和への取り組みなどの本が紹介されています。

第5章「現代の重要問題」では、今この時代の課題についての選書です。リーマンショックに端を発した世界的な同時不況、アメリカ的グローバリズム、または地球環境について、そして日本の格差および構造不況、また途上国の貧困問題など、現在我々及び世界が抱える問題の状況や分析についての本が紹介されています。

第6章では「本の買い方選び方」として、読者が目的に合った本を選ぶ方法などを解説しています。最初に現在の出版界や流通と図書館などの現状、小説や文庫・新書といった形体別の解説があります。大学図書館や公共図書館では書籍購入費の倍の費用が人件費になっているというのは驚きでした!同時に外国の図書館と、あまりにも開きのある日本の図書館の現状にも!

本題の目的の本を見つける方法としては、ベストセラーに惑わされないのはもちろんのこと、大型書店チェーンの売上げランキングにも惑わされてはいけないとしています。人文や小説・ノンフィクションまたは、目的の学問の専門書などの出版社別の傾向を知り、その出版社が出している出版案内や目録などの小冊子をチェックするのがひとつ、これについては本に入っているアンケートで取り寄せることができ、書店で無料配布している場合もあります。他にも図書館や書店のパソコン書籍検索よりネットのオンライン書店のほうが断然充実しているといいます。さらに手に入りにくい専門書の場合、医学書なら病院や大学病院などの近くに専門書店がある場合が多く、同じく他の専門書でも、その研究機関やその学部がある大学近くにある場合が多いといいます。

そして、これはという目的の本を見つけた場合の簡単なチェック方法としては、まず「索引」がついているか、それも「書名索引」だけでなく「事項索引」そして「文脈索引」まであるか、次に「参考文献」「引用文献」がついているか、これには例外もあって参考文献に著者の自著が多数あった場合、また参考文献にその本の著者に対立する意見のある本もあるかというところもチェックします。そして「まえがき」と「あとがき」をざっと読んで、著者の目的意識がはっきりしている場合は買いです。もちろん本書もその通りの作りとなっています。それと英語が読める方は、英語の書籍で目的の本を探すのを本書では薦めています。世界中の大半の本は英語で書かれており、和訳された本は世界からしたらほんのわずか、さらに英語の書籍には、まだ和訳されていない名作が多数あり、本書は外国書籍も読むことを推奨しています。

本書では一応101冊とタイトル付けされていますが、「本の買い方選び方」で書かれていたことと同じく、1冊ごとの本を紹介する項目では、その本の類書や解説書や紹介した本の著者が書いた他の本も紹介されています。さらには本書における本の選考基準とするために参考にした、他のブックガイドや書評集もきちんと参考文献として紹介されています。ですから、101冊のみならず、参考文献も合わせると百数十冊はあると思います。さらに本書における本の解説は、大学新入生に向けてという通りで、極めて平易で分かりやすく簡潔に要点だけをおさえた文章ですから、ある意味書評のお手本としても読めるほどです。

私としたらページをめくるたびに、どの本にも目移りしてしまい、参考文献などまで読みたくなったほどです。読み終えて、もう一度本のラインナップに目を通すたび、何と広島大学の学生さんは恵まれているのだろう、これほどの教養のある指導者や選書眼のある司書のいる図書館で学べるとは何と幸福だろうと思います。嗚呼!もっと若い頃にこのような本に出会っていたかった!そう思わせる内容です。

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2009年10月19日

【書評集】読者は踊る@斎藤美奈子

本書でまさに踊らされました。本書は95年当時著作の書評集です。その当時に流行ったいわゆるベストセラーを聖書から猥談本までタイトル通りバッサリ斬ります。斎藤美奈子さんは以前から紹介していましたが、当ブログで以前紹介した「(当ブログ)趣味は読書」でベストセラーというものが、いかに出版業界の作為的なものなのかを本書と同じく切れ味鋭く解説した書籍もあります。

出版業界界隈には斎藤さんのみならず書評家といわれる人は幾人かいて、僕もそういう方々の書評集は良きブックガイドとして好んで読んでいます。今まで読んできて思うのは書評家の方々いわゆるプロの方々の書評というのは、それが本書のように酷評していたとしても、それが逆にその紹介本を読みたくさせるような書き方ではないかなと思います。そういう意味では本書の著者はさすがプロというか私の書くようなものはまだぜんぜんだなと感じさせます。

例えば著者はそういうことにも言及していて、〈夏休みの課題図書は「じじばば文学」の巣窟だった〉という項目では、子供たちに本を読ませて書評を書かせるという教育自体は肯定しつつ、これら課題図書を酷評しこう書きます。

「小学生の私だったら、さっきのような感想文はもちろん書かない。本番ではこういう批判的な読み方は絶対禁物。嘘でもベンチャラでもいいから、あくまで主人公に感情移入し、自分の生活体験や心情を重ねあわせて綴るのが『よい感想文』なのだ。

考えてみれば、大人の世界の読書感想文(書評)だって率直な批判を避け、いい子ぶりっ子している点では、似たようなものである。」

思わずドキっとする文章です。そしてそれを裏付けるように著者について本書の解説を書かれている故米原万里氏によると、作家や出版社が主催するどのパーティーにも著者の姿を見かけたことがないという、作家や出版社とずぶずぶの書評家もいるなかで、それだけ批評するうえでも徹底しているといえます。

さて本書の内容は、ただ売れている本を感情的に批評しているわけではなく、読んで疑問に思ったことについては複数あるいは膨大な類書を読み調べることを前提として書かれています。だから本書の批評はスキがありません。そういう意味で徹底的にツッコミます。

だからといって読者を引き離してしまうわけでなく、著者の感性はドキっとするほど読者の心をつくものもあります。例えば赤裸々な私小説やいわゆる問題作といわれる作品を書き続ける柳美里氏の著作に対してこう書きます。

「『フルハウス』に出てくる失語症の少女。『もやし』に出てくる知的障害のある青年。こういう種類の人物に対する視線に、無意識の差別感、といって悪ければ〈鈍感さ〉を感じちゃうのである」

私も以前柳美里氏の作品に対して同じような重い違和感を思ったことがあり、それをきちっと言語化してくれる批評にまさに納得できます。

こうしたタッチで各種ベストセラーを批評していくのですが、ふ〜んと感心し思わず笑えるものもたくさんあります。目次をいくつか紹介すると「女子高生ルポの商品価値はナマ写真ならぬナマ言説」「死ぬまでやってなさい。全共闘25年目の同窓会」「下半身じゃなく大脳を刺激する『高級猥談』の妙味」「みんなひれ伏す『在日アウトロー』という物語」等々

他にもジェンダー論争をウーマン・リヴ当時から振り返り、最初の論者たちとその後の論者たちとの温度差を全共闘運動になぞらえ、今の論者はどうやら最初の論者たちの活動を敗北と見る点では男も女も同じだなと腐してみたり、縄文時代などの考古学者たちの書物を批評するかと思えば、そこにジェンダー的視点が感じられないと新たな視点を見出し、なぜ縄文時代の描写には男性社会しか描かれないのかと疑問を呈したり、こうした面白い発見や視点が全編において展開されます。

95年当時の内容ですが、文庫化に当たって著者の注釈がつけられているところも良い点です、当時の時代の雰囲気を味わうのもいいですが、本の読み方というかさすがにプロの著者には勝てませんが、ただ本を読むだけじゃもったいないという気分にさせてくれます。掛け値なしに面白い内容でした。

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2009年01月10日

読書狂刑事(デカ)! 警察小説を〈元警視庁刑事〉北芝健が案内する

TVでもおなじみの北芝氏が今回も男性ホルモン&アドレナリン全開でお届けする、元刑事による刑事のための警察小説案内です。普段はなにかと警察批判ばっかりしている僕ですが、著者が頻繁に言うヤクザや犯罪者に対する武勇伝や、現役時代の女性遍歴などの自慢話を差し引いてもなかなか警察の裏事情は結構面白いと思います。この本でも元刑事の経験から数々の有名警察小説を細かいところまで解説してくれてます。はじめに大まかな解説で本当に内容が実際の警察に即しているか。そして、作品に登場する刑事・警察官と似たような人、エピソードを紹介しつつこのシーン、この捜査、私だったこうすると実際の警察の捜査手法を解説しつつ、気になった所もしっかり指摘する。この本に紹介される時点で、だいたい著者も認める警察小説なので、指摘されても、階級や敬称など細かいところだけなのですが、結構このへんの指摘は、元警官だけに大変面白いです。

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2009年01月06日

これは絶対面白い! 書店員が見つけたロングセラー

紹介される本はロングセラーになるだけあって、表紙、装丁、内容共に、お客さんが納得して買っていかれるだけの本が目白押しです(なかには僕がこのブログで紹介している本もあったりして、見つけたときには思わずムフフとなってしまう本もあったり)。

一つの本が見開き2ページにわたって紹介されていますが、はじめから終わりまで書店員さんの情熱が伝わってきてどの本も気になってしまいまいた。きちんとその本が並べられている書店名と書店員さんの顔写真がついているのも好感が持てます。

興味深いのは、書店員さんが押す本の多くが名の知れたベストセラーではなく、いわゆる名作でもなく、色んなジャンルの知る人ぞ知る、作品ばかりです(さすがにプロだなぁ〜って感じのセンスです)。

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2009年01月03日

宮崎哲弥「1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド」

テレビなどで活躍を続ける宮崎哲弥さんの、知識の奥深さが知れるなんともスゴい本です。本好きなら誰でもこと手の本は好きだろうと思います。

僕もこの手の本は大好きです。1冊の本を読むだけで膨大な量の本を読めることと、自分が知りもしなかった、様々な分野の専門書など、いいとこ取りで読めてしまいます。

そんなブックガイドでもこの本の著者は宮崎哲弥さんです。参考にならないはずがありません。

普通のブックガイドや読書日記というものは、一貫性のない本を列挙するように著者の趣味趣向で並べられていますが、そこは宮崎哲弥さん、きちんと読者のことを考えておられます。

紹介する本にはテーマがあって、○○というテーマには、AとBがいいですよ、と提示する、しかし、このテーマに反論する形で、CとDという本もありますよ、ときます。ここで終わらないのが宮崎さん。

ABとCD両方の言い分をまとめたのがEとFではFの方が要点がまとまっている、といった感じなのです。さらに、読者を考えてくれるのは、このテーマについてまだ知らない人のために、GとHとIという初心者向けの本がありますよ。という親切な内容。まだまだあって、これらの本に飽き足らない方には、JとKという関連書籍もありますから、いかがですか?という、念の入れようです。

このテーマには、政治経済などの時事問題から、科学から仏教哲学まで幅広い内容になっています。

本書の内容は、週刊文春などに連載したものをまとめたものらしく、後書きには、マスコミの方々などから、参考資料として大変役にたったという言葉をいただいたと書いてあります。

まさに参考資料としては、どの書評家よりも読みやすく、第1級のものだと思います。いわずと知れた僕もこの本を参考に読書を進めていきたいと思っています。

しかし、読めば読むほど知りたくなってくるのは、世の中にある無数の本のなかから、このような的確な選書をどうやってするんだろうという素朴な疑問です。そのあたりのことを、知りたくなってくるほどです。

表紙をあけて、最初から最後まで読書案内で、僕が疑問に思う宮崎さんの私事は書いてありません。まさに1から10まで本、本、本の本づくしの1冊です。

この本で、様々なテーマを考察するのもよし、そして多種多様の本から知的好奇心を喚起されるのもよし、とりあえず本好きにはたまらない内容でした。

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