2009年10月14日

良心をもたない人たち−25人に1人という恐怖

本書はいわゆる反社会性人格障害あるいはサイコパスまたソシオパスと呼ばれる病気の人たちを扱った内容です。『ウィキペディア(Wikipedia)』によるDSM-IV-TRによる診断基準によると以下の通り。

1 他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以来起こり、以下のうち3つ(またはそれ以上)によって示される。
1. 1・ 法にかなう行動という点で社会的規範に適合しないこと。
これは逮捕の原因になる行為をくり返し行なうことで示される。
1.2・人をだます傾向。これは自分の利益や快楽のために嘘をつくこと、偽名を使うこと、または人をだますことをくり返すことによって示される。
1.3・衝動性、または将来の計画をたてられないこと。
1.4・ 易怒性および攻撃性、これは身体的なけんかまたは暴行をくり返すことによって示される。
1.5・自分または他人の安全を考えない向こう見ず。
1.6・一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということをくり返すことによって示される。
1.7・良心の呵責の欠如。これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人の物を盗んだりしたことに無関心であったり、それを正当化したりすることによって示される。
2.患者は少なくとも18歳以上である。
3.15歳以前発症の行為障害の論拠がある。
4.反社会的な行為が起きるのは、精神分裂病や躁病エピソードの経過中のみではない。


著者はトラウマカウンセラーとして25年間治療を続けたセラピストですが、トラウマを抱えたクライアントの多くがこうした反社会性人格障害患者による被害だったというのです。反社会性人格障害は一般にメディアで報じられる犯罪者などを思い浮かべますが、こうした人たちは、普通一般の人々の中に多くが紛れ込んでいる例がほとんどだといいます。

アメリカの刑務所で囚人たちを調べたところ、この反社会性人格障害であった者は全体の中の約20%だけであったというのです。多くが貧困や家庭環境のために法を犯した人間だったのです。反社会性人格障害の人たちには冷徹にゲームを楽しむため法を犯すような間違いはしないのが主流です。むしろ法とギリギリのスリルを好みます。

多くの同僚との出世競争に勝ち抜いた大企業のCEOから、そんな患者を治療する医療従事者、また多くの父親や母親まで反社会性人格障害である人間は多種多様な職場や家庭に紛れ込んでいます。著者が示す統計によると25人に1人がこの反社会性人格障害であり、100人いれば4人は反社会性人格障害の患者がいるというのです。つまりは、いわゆるうつ病や統合失調症などよりそれらの患者の比率は意外に多いことが分かります。

本書で示すその特徴は、人生そのものを支配ゲームだと思っていること。彼ら彼女らには良心また愛情という感情が欠落し、その代わり法に触れるギリギリであってもスリルを好み人生をゲームのように楽しんでいるのだといいます。そして何より嫌うのが“退屈”なのです。本書の中であげられている特長を以下に書くと、嘘をつき空涙で同情を引き、追いつめられると逆切れするというのです。

これらの人たちは他人の特性を冷徹に見抜き、人の良い人間やだまされやすい人間また弱い人間をすぐさま見つける能力に長けています。それが職場の同僚であろうがクライアントであろうが自分の子供であろうが。普通の一般人のなかに紛れそれらのターゲットを見つけると自分の支配欲を満たすために、ゲームをしかけるのです。そしてあるいは自分の出世ゲームの味方につけ、欲望や依存のための道具とするのです。

人を鋭く見抜くように自分自身の能力を見抜くのもうまく、自分に社会的地位を勝ち抜ける能力がないと見切ると、それは家庭という小さな場所でのゲームや、同僚や同じ地位どうしの派閥争いや職場いじめなどのゲームに留まります。しかしこれらの人たちには自分が反社会性人格障害という自覚はありません。すなわち治療することも困難なのです。

反社会性人格障害はまだ十分な研究がなされていませんが、遺伝的な要因が50%といわれ後の50%は幼児期の虐待または通常の愛着が2-3年以内に形成されない場合には、愛着は遅れて形成されるとする愛着理論にもとづく愛着障害(ウィキペディア(Wikipedia)』)によるものが原因ではないかとしています。ただこれがもしくはこれだけが理由というわけではありません。

また著者はこれも他の精神疾患と同じように脳の障害であるとしています。この反社会性人格障害の場合大脳辺縁系に何らかの障害があると書いています。また著者は、アジア特に日本と中国にはこの患者が0.03%また0.14%と少ないため、アジアの仏教や神道また国の価値観が病気に効果を及ぼしているのではないかとする仮説を書いているのですが、私自身の考えとしては日本が欧米ほど特に精神医学分野では進んでいないために、診断されていない潜在的な患者がアメリカと同様25人に1人はいておかしくはないかもとは思います。

本書にはそうした反社会性人格障害の人間たちから身を守る13の方法が掲載されていますが、だいたいの要点を書いてみると以下。

・世の中には良心のない人もいるという苦い薬を飲み込もう
・ 自分の直感と相手の肩書きにギャップを感じたら、直感のほうを信じよう
・ 嘘、約束不履行、責任逃れが3回重なったら、その人を信じてはいけない
・ そんな相手はなるべく避ける
・ 調子のいい言葉を疑うこと
・ 人に同情しやすい自分の性格に疑問をもとう
・ ゲームに参加しない
・ 治らないものを治そうとしてはいけない
・ (被害を受けても)幸せに生きる

しかし、これらの人たちがたどる道は何も社会的地位の高いCEOや職場や家庭のゲームの勝者かといえばこれが全く反対で、企業のCEOにしても経営や危ない橋をゲームのように渡り続ければいずれは破滅が訪れるし、他の一般に紛れている反社会性人格障害者にしてもスリルを求めすぎるあまりドラッグやアルコールに走り依存状態になってしまったり、あるいは自身の能力を過信しボロが出て破滅してしまうことが多いのだそうです。

そうじて気の重い本を読みました。治療も不可能に近く25人に1人であり100人に4人ということは、どこにでもいて当たり前です。その人たちは愛情や良心が欠落しているために、良心の呵責というものもないのでしょう。そういう人たちが割りとそこらじゅうにいるとすれば恐るべきことかもしれません。ですが、著者も書いているように他の96人の人たちは良心と愛情を持ち合わせた人たちなのです。もし現にそれらしい人たちによって被害にあった方がいらしたならば本書で書かれているように何よりの報復は被害者が幸せに生きることなのです。それらの人たちの多くが幸せを知らないのだから。

良心をもたない人たち―25人に1人という恐怖
良心をもたない人たち―25人に1人という恐怖Martha Stout

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2009年01月05日

自殺の心理学

「自殺の危険の高い子供の背後には、自殺の危険の高い親がいる」「自殺の危険の高い親の背後には、自殺の危険の高い子供がいる」この文章はショックでした!!

自殺者が3万人を超える現在その数は10人に1人とも言われています。この本では自殺者を青少年・中年・高齢者と分け、それぞれに実例を挙げながら自殺の予防や対応、どのような環境でおき、その背景までを解説しています。

青少年の自殺ばかりがマスコミに取り上げられる昨今、実際にはその何倍にもわたり高齢者の自殺が深刻化しており、家族、地域社会との関係の希薄化、未だ連携のうまくいかない一般診療と精神科の横のつながりなどを批判がなされています。また自殺者に見過ごされがちなうつ病に対する指摘もされています。

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「引きこもり」から、どうぬけだすか

カウンセラーである著者が自らカウンセリングしてきた多数の事例を分かりやすく解説している。私自身も引きこもり経験があるんですが、この本に多く出てくる若者たちの社会に適応できない点。要するに人とうまく関われず具体的に喧嘩しても仲直りできない・同年代の若者同士でもタメ口がきけない。上手な人間関係が築けず相手との世間話しでも相手を批判する事しか言えない。

些細な事に深く傷つく・・・などの事はなるほど参考になりました。多くの事例が載ってますが、親は暖かく見守るとか話しをよく聞いてあげるとか、普段から心がけているようでできていない事が多く、あらためて参考になりました。

話しをただ黙って聞くという事がいかに大切だという事か!それに最初は出来なくて当然、いきなりではなく、一歩ずつ着実に社会と関わっていく方法など・・・・中には引きこもりをぬけだした事例も載っており、そのへんは参考になるかも。難しい専門書が苦手な人や、引きこもりについて、知りたい人など入門書的な一冊だと思いました

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屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理

幻の同居人と呼ばれる屋根裏の何者かと不思議な共同生活をおくる人たちの精神病理について書かれています。このような屋根裏の何者かについては古くから都市伝説や小説の題材として知られてきました。

多くが一人暮らしの老人や孤独にさいなまれる人々の精神状態が生み出したものだと著者は解説しています。そして“家”というものがいかに人々のよりどころとなり、精神的支柱となっているのかを解説します。精神保健法以前の私宅監禁“座敷牢”や昨今話題のゴミ屋敷などについても同様の解説がなされています。

現代の都市伝説(電波系)などにはほとんど解説がなされていません(少し残念)。

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posted by hermit at 11:47 | Comment(0) | 心理学(本)

「ひきこもり」がなおるとき 23人の臨床例

精神科の臨床の立場からひきこもりの現状と回復過程を詳細に解説しています。30万人とも50万人ともいわれるこの人々は社会問題ともなっています。多くの人は対人関係の悩みやその他の色々な個人的なきっかけがあり、必ずしもこれといった原因はないのだそうです。

そしてこの本にある通りひきこもりの人にに病名をつけるとすれば人格障害という病気でない病名をつけられる人が大半ですが、中には統合失調症、うつ病、強迫性障害、パニック障害の恐れがあり、それを見分けることが重要だとのべられています。

家族の方たちも教育方針や家庭環境に対し、深い後悔の念を抱くケースが多い中著者は家庭環境や教育方針には必ずしも発端となる原因は見当たらないとする意見には自分の経験から思わず納得してしまいました。

そしてひきこもりの家族の半数が一度は経験しているという家庭内暴力。これにも著者ははっきりと第3者や警察の介入をするべきだとのべています。ありがちな精神論ではなく、実践的な解決法を提示してくれる著者に好感が持てました。

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posted by hermit at 11:39 | Comment(0) | 心理学(本)

青年期 精神病理学から

青年期とは13〜14歳から30歳前後の若者のことを指します。厳密には、前半期と後半期に分かれていますが、この本では中学から大学を卒業し社会人となる年代全般におこりえる様々な問題について解説しています。

この本は77年初版の本ですが、著者の精神科医が、臨床の場で診療してきた若者たちにおこった、「登校拒否」「学校恐怖」「家庭内暴力」「生きがいが見出せず、意欲がもてない」また「社会に出ても、長続きしない」といった現代で言えば、ニート・ひきこもり・フリーターといったものにも通ずる問題を論じています。

著者のスタンスは、紹介したこの文章にあらわれているように、現状を精神科医の視点で鋭く観察し、1人の医師としての見解は示しますが、これといった答えはあえてしません。いつの時代でも、青年たちは、自分のアイデンティティを模索し、生きがいと人生の目的を探し求めます。モラトリアムともよばれるこの時代は、いかに生活環境が発達しようと誰もが通る道なのかもしれません。

青年期―精神病理学から (中公新書 (463))
笠原 嘉

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2009年01月04日

「こころ」の本質とは何か 統合失調症・自閉症・不登校のふしぎ

自閉症の解説に多くのページがさかれていますが、
個人的には統合失調症についてが興味深かったと思います。

おもに幻聴・幻覚・妄想についてのことが多かったのですが、
これらの事は統失患者が共同体(社会の色々なしがらみや関係性)の中で
とても苦しいストレスやプレッシャーを防衛、回避するための症状が
幻聴や妄想といったもので、それは回復途上の症状であるとの見解は
とても興味深いと思いました。

他にも人格障害にも統失に似た被害妄想などが
みられることがあるとのことで、それについては少ししか
ふれられていないのが残念でした。

「こころ」の本質とは何か (ちくま新書)
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滝川一廣

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posted by hermit at 17:07 | Comment(0) | 心理学(本)
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