2008年12月17日

障害者の経済学

序 章  なぜ『障害者の経済学』なのか

          第1章  障害者問題がわかりにくい理由
 
          第2章  「転ばぬ先の杖」というルール

          第3章  親は唯一の理解者か

          第4章  障害者差別を考える

          第5章  施設は解体すべきか

          第6章  養護学校はどこへ行く
          
          第7章  障害者は働くべきか

          第8章  障害者の暮らしを考える

          終 章  障害者は社会を映す鏡



          

     〈読んで考えたこと〉

         養護学校や介護・福祉施設での数々の不祥事が
         最近目につくようになってきました。

         虐待や暴行といったものから、
         補助金の不正受給などの金銭にまつわるものまで、
         まるで今までの長年の膿がでてくるように。

         福祉そのものがボランティア精神とか
         善意とかいう意識が強いため、
         これら密室で起こる出来事は、
         新聞やTVで報道されるたび、
         人々に衝撃をあたえています
         (これらは氷山の一角であり、
         また障害者による職員への暴行などもみられています)。

         またこれらの背景には完全に受身の当事者や家族が
         施設側や学校側にものが言えない状況があります。

         家族はできるだけ待遇の良い施設を探し、
         頭を下げ障害を持つ子供を”入れさせてもらい“、
         当事者はたとえ月給1万円だったとしても、
         他に選択肢が無いため授産施設で働く。
         それができなければ家族のもとでひきこもりのような
         生活をするしかなかったのです。

         そして障害者自立支援法が成立しました。

         この法律は、ある意味国が養っていた障害者たちを、
         市場経済の一員とみなし、障害者においてもある程度の
         納税を課そうとする法律です。

         その代わり当事者は施設を選び、
         企業などへの就職によって自立をうながすことが
         目的だと言われています。

         この法律の背景には国の財政のひっ迫と
         福祉に対する負担の増大があり、
         やがては介護保険などとの統合も視野にいれての
         施行だと言われています。
        (この法律には、重度の障害者や授産施設で働く障害者などの
         負担など問題も多くはらんでおり、
         これに対する法律も検討されています)

         この本、「障害者の経済学」では経済を専門とする著者が、
         冒頭で言われるような、不祥事を起こす施設や、
         低賃金で働く障害者の問題に対して、
         福祉を市場原理にのせることで、新規参入をうながし、
         競争原理の中で福祉施設の質を高めていくことが、
         これからの福祉には必要であり、そして当事者も地域の中で
         社会のニーズを把握し、これも市場経済の導入によって
         これまでの低賃金でやる気のない労働から
         脱却する必要を訴えています。

         これには障害者自身がこれまで恩恵にあずかってきた
助成制度、例えば障害年金や医療費の免除、
公共機関の割引など、市場原理からはずれ、
         国による補助などに甘んじ、
         自らを経済システムの一員であるということを忘れた
         当事者たちのこうした面があるからだと
         著者は指摘しているためです。

         やもすると、強引と受け取られそうな著者の意見は、
         現実に障害者自立支援法の成立によって
         障害者の負担増が始まった現在、
         いやがおうにも現実味をおびてきています。

         これまでの日本の福祉事情は、
         アメリカのように完全な競争社会の中で、
         ボランティアや宗教団体に補助金を給付することによって
         障害者をカバーするか、
         北欧のように国による手厚い福祉制度のかわりに
         障害者に対しても重い税金を課すかのどちらかを、
         かたよりのないようバランスをとって来たといいます。

         そして、日本の政府は競争を選びました。

         競争社会による市場原理の導入によって、
         これから障害者を取り巻く環境は変わっていくかも
         知れませんが、著者は北海道浦河の「べてるの家」や
         千葉県柏市にある社会福祉法人「彩り会」などの
         成功例によって、障害者が地域で暮らすことで
         地域の活性化に貢献していることなどを紹介しています。

         現状を決して悲観せず、現実を見据え
         これから考えなければならないことを
         客観的に書かれており、今までの障害者の本とは違う
         障害者のための経済理論でした。

障害者の経済学
障害者の経済学
中島 隆信

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posted by hermit at 08:15 | Comment(0) | 社会復帰と福祉制度(本)
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